2016年2月28日日曜日

「スターウォーズ フォースの覚醒」(J・J・エイブラムス監督、ディズニーピクチャーズ、2015)

 2015年は映画の当たり年だったと思う。20世紀から続いたシリーズ物(ターミネーター・ジュラシックパーク、見てないけどマッドマックス)は大絶賛の嵐だし、かと言って新作も全く負けていなかった(キングスマン・アントマン・トゥモローランド・ひつじのショーン、などなど)。そしてダメ押しでスターウォーズ。正直、懐古厨と言われても仕方ないのだが、エピソード4~6が大好きだった。エピソード1~3は冗長な割に肝心のシーンが描かれてなく(例えばエピソード2の後でクローン・トルーパーが大勢力になったとか、エピソード1と2の間のアナキンの成長とか)、ピンポイントなファン向けの映画という印象を受けた。
 しかしやっと新たな物語を紡いでくれる。ありがとう、ディズニー! そして少しはスターウォーズを見習え、庵野カントク!

 スターウォーズというのは人によって期待するものが違うと思うけど、僕の場合は言葉通りの「スペースオペラ」を求めていた。王道のストーリー、壮大な背景、豪華な音楽、魅力的なキャラクター達、それらが宇宙を股にかけて戦う。全然裏切られず、時間があれば何回でも見たい。今回は2D吹き替えだったけど、ぜひとも字幕で生のお声を聞きたいと思った。

 ストーリーは正に王道。実のところ、恐らく伏線とかが教科書通りにある弊害だと思うのだが、常に5分先のストーリーが読める。本当の意味でこの映画で驚いたのは、ラストシーンくらいかな。え、彼眠りについちゃうの!? え、彼、もう出てきちゃうの? もっと登場を引っ張るかと思ったのに、という感じ。ネタバレになっていないと良いが……。
 ただ、5分先のストーリーが読めるというのは王道だからこその楽しみなのだ。水戸黄門で印籠を出すシーンをまだかまだかと待っている感覚が近いかもしれない。観客としてはストーリーとキャラ造形とシチュエーションでスターウォーズ的な先の展開が読めるんだけど、それをどう映像化するか待つ楽しみでもある。エピソード4~6を知ってるとニヤリとするセリフも散りばめられ、いわばセルフパロディも見られるが、
 なお、今作はエピソード4~6で登場したキャラが大量に出てきたこともあり、年寄りどもに対するサービスとしてわざと先の展開を読めるようにしていた可能性がある。とはいえ、過去のエピソードから決別するシーンもあるわけで、次作以降はエピソード4~6の遺産が使わない意志だろうと推測。どういうシナリオになるか楽しみ。
 また、この文章を書いてて気付いたが、あくまでエピソード4~6の要素から出来上がっているんだな。時代が離れているとはいえ、エピソード1~3は別に見てなくても問題ないという……。

 キャラクターは王道の構成。ただ、C-3POとR2-D2はレギュラーで出て欲しかったな。以前、スターウォーズはこの2体のロボットが狂言回しとして傍観者の立場で歴史に立会うみたいな解説をどこかで聞いたので、ついに1キャラクターになってしまったかと思った。でも別に今作のドロイドが悪いわけじゃなく、むしろ前2体のロボットよりも感情が読み取りやすいので観客の受けが良いと思う。単に懐古厨としての発言である。
 今作は助けを待つ姫とか導いてくれる老導師とかがいなかった面白い作品。メインキャラは全員が主人公で、全員にそれぞれ活躍の機会がある。

 音楽はジョン・ウィリアムズ。素晴らしいの一言。所々でエピソード4~6の曲がかかる演出も小憎らしい。本作は新たなストーリーとエピソード4~6を結びつけてる位置のはずなので昔の音楽が意識的に取り入れられてるんじゃないかと思うんだけど、使われ方が最高。重要なシーンでピンポイントで流れるので印象深くなる。正直、こんなメインになるシーンで過去の曲を使ってて大丈夫? と心配になるほど。ストーリーがここまで上出来なんだから音楽は別に懐古厨を喜ばす必要はないよ、と言ってあげたいくらい。新たな曲もまだ聞き慣れてないから印象に残っていないだけで、映画に合っていると思う。ジョン・ウィリアムズの腕はまだまだ健在だ。


 一方で問題もなくはない。本作は敵との対峙および敵からの脱出シーンが頻繁に出てくる。ちょっと数が多すぎて印象に欠けることもあった。
 そして敵が意外と弱い。旧作で忍び込み放題だったデススターの教訓は生かされてないようだな。ついでにカイロ・レン、弱くなかろうか。一般人相手は確かに強いけど、物語後半になりレイたちが鍛えられるに従い、圧倒性が消えていった。

 結論
 大当たりの大作。スターウォーズの完全復活である。

「かわいい闇」(マリー・ポムピュイ&ファビアン・ヴェルマン&ケラスコエット、河出書房新社、2014年)

 初めて日本以外のマンガを読んだ。
 外国のマンガ、特にフランス系のマンガは絵に特徴があったりコマ割りが日本と異なるイメージがあり、なかなか手に取る勇気が出なかった。この作品はそんな偏見を砕いてくれ、他のいわゆるバンド・デシネも読もうかと思わせてくれた作品。

 僕が読む上で世界観に引き込まれた点はカラーであること。日本のマンガであれば冒頭のシーンなんかはモノクロでベタ塗りが多い空間になると思う。最近のマンガは絵が緻密になっており、一定以上の込み入った構図だと物体の位置関係が掴めないことが多かった。カラー絵だとそこら辺の問題が一気に解決でき、素晴らしい。そして今後、モノの配置を複雑にしたシーンを描く場合はカラーでなければきついのでは……とさえ思った。
 また、キャラクターの表情や造形が日本人に違和感のない画風なのも心強い。特に終盤、ソウルジェムが濁りきったオロールさん(主人公)顔に影が描かれ目のハイライトが消える絵柄はそれこそまどマギに出てきますと言い張っても問題ないくらい。バンド・デシネはアート系の絵柄だと思い込んでいたが、調べれば読みやすい(あくまで自分にとって)絵柄もあるんだね。
 キャラクターデザインは、終盤のオロールさんが本当に可愛かった。キャラ萌えはしない方だけど影の濃くなったオロールさんには萌えた。そう、この作品ははっきりと「萌え」を抱けるレベルの可愛らしさとキャラ立ちがある。

 アマゾンのレビューを見てもマンガとしての読みやすさやキャラの可愛らしさは言及されている。どうもバンド・デシネの中ではかなり日本人向きの作品っぽい。

 ストーリーはそもそもバンド・デシネが大人向き(子供向けではない)というのを知っていれば衝撃はあまりない。ショッキング系マンガは既に日本に大量にあるし、可愛い絵柄で残酷っていうのもオタクだったら数作品は挙げられるだろう。それこそ一部のエロゲなんかは男性向けの可愛いキャラが酷い目に遭うってのを売りにしているわけで。
 誤解のないように書いておくと、読み進めるにしたがって「うわあ……」という感情になってくる。僕は頑張ってるオロール萌えで読んでいたため、ヒエラルキー競争に破れ妖精仲間から逃げ出したオロールさんの姿に悲しみを感じた。食い物にされるオロールさんが不憫で不憫で気が滅入るので、一度読んだらとりあえず2、3日は間を空けたい。だが、妖精たちの行動は15少年漂流記的なサバイバルであり、自然が起こす春夏秋冬でしかない。必要以上に怖いだの気持ち悪いだのと褒める(この作品にとっては褒め言葉ではあるが)のもなんだかなー。

 むしろ僕が面白かったのは筆者へのインタビュー。冒頭の大オロールの死はフランス文化の中では児童ポルノに当たるんだとか。

p97
少女の死を扱うというのはフランスでは非常にデリケートな問題なんです……(中略)……彼女が死んでいるのは事実ですが、殺されたかどうかはわかりません。・・・・・・特に答えを決めていないんです。
pp..101-102
森の中での少女の死が語られています。これは小児性愛者による犯罪を想起させますから、フランスでは非常にタブーなテーマです。

 森の中での死体放置ってのが連想させるらしい。はあ、そういうもんなんですか。インタビューでは製作の背景にある「フランス文化」としか呼びようのないものが日本文化で育った僕を直撃する。こればっかりはぜひとも本を読んで欲しい。かわいい絵柄の日本人読者にとって特に問題にもならないストーリーの裏で文化の違いがこれでもかというほど出てくる。正直、本文よりもインタビューだのあとがきなどの方が読み応えがあった
 フランスマンガであるという事前情報があればの話だが、最高傑作。

2016年2月7日日曜日

ランス03(アリスソフト、2015)

 やっとクリアした。と言っても発売されてから今までずっと遊んでいたわけじゃなく、今年の1月半ばに始めて最近ラスボスを倒した。
 人間なによりも厄介なのは自分の中で作ったイメージであり、特に声が合わないように感じると苦痛になってしまう。だから今まで遊ぶかどうするか悩んでいたのだ。
 僕はランスシリーズを5D・鬼畜王・6・7・8・9の順に遊んだニワカだが、それでもランスの声のイメージは自分なりに頭の中にあるわけで。
 そんなこんなで今年になってやっと遊ぶ決心ができたのだった。

 で、懸念されてた声の方は意外と問題なかった。冷静に考えたら、僕は声が聞き分けられるスペックの良い耳など持ってなかったのだった。
 むしろ声優さんが付くと中の人ネタ(かなみちゃん→超昂閃忍)ができて楽しいかも。そしてキャラがいきいきとする。ALICEMANLADYと魔剣カオスは声が付いて大成功だった。また、重要なのだが声がついたおかげでサブキャラのエロシーンが一気にエロくなる。まるでランスでなく別ゲームを遊んでいるかのよう(このシナリオライター氏と原画氏のゲームは始めてだが、エロシーンのテキストがエロくなっているのは驚きだった)。まあ、あくまでリメイクという遊びの中の話だけど。

 個人的に注目だったのはゲームシステム。ダンジョンをカードで表現するのは一見あっさりしすぎだけど奥が深い。ダンジョンの通路を常に5枚のカードにして、壁とか小道とかはカードを表にした瞬間通れないことがわかり、しかもカードの配置は常にランダムにしてみると不思議のダンジョンっぽくなるとか、色々遊びの範囲が広がりそう。ランス5Dに通じる簡潔さだ。僕ももうおっさんなわけで、この歳になると複雑怪奇なシステムよりも、いかにシンプルでされど応用しやすいかが評価の対象になるわけだ。良い意味で遊びやすい。
 戦闘システムもゲームの進行を阻害しない簡易さと、でも近年のランスシリーズらしい限界レベルやスキルシステムだ。単なる殴り合いかと思いきや、それなりの戦略性もあるしプレイヤーへの変なストレス(やりごたえがあるという名目の敵専用理不尽能力)がないので遊びやすい。戦闘システム系も若い方が考案されたのだとしたら、順調にスタッフが育っているということで、会社として見事である。

 ゲーム内容だが、原作はやったことないものの、色々気を使ったんだなーと思わせられる。ある意味でランスシリーズの設定が始めて形になった作品であり、今とは異なる設定の数々に整合性を取ったのがwikiなど周辺情報からわかる。そして昔特有のキャラクターの性格やストーリーがいい加減さも修正されている(らしい)。かつてはプレイヤーもおおらかだったんだ……。この当時のゲームは「ぷろすちゅーでんと」など数作しかやったことないが、完全にフリーゲームのノリで作られていた(よりにもよって「ぷろすちゅーでんと」だけど)。
 昔の作品が今風にアップデートされて蘇るのはファンにとっては喜ばしいことだと言えよう。……まあ、味をしめてリメイク商売をされ、新作が出ないと悲しいがたぶんアリスは大丈夫だろう。

 キャラクターなどは今のキャラから見て違和感がないようにしているらしい。性格は最新作と辻褄を合わせているようでランスはある種のぬるさがあるけど旧作のファンからしたら大丈夫だったろうか(5Dと鬼畜王が飛び抜けて鬼畜なんだが)。
 フェリスなんかは快活にコメディキャラとして動いており、数作後の変わりようには心が痛む。

 クリアした後は、それで終わり……なのかな。ランクエみたいにやりこみ要素はなさそうで、そこは悲しい。
 次はランス10だろう。スタッフには相当なプレッシャーがかかっているだろうが、頑張って欲しい。

 しっかしYUKIMIさんもぷりんさんもこんなパットンをよくぞ助けようと思ったものだ(笑)

「超動力蒙古大襲来」(駕籠真太郎、太田出版、2014)

 2013年スペイン・バルセロナマンガ賞受賞凱旋第1作だって。
 「輝け大東亜共栄圏」の方がはっちゃけてたなあ。
 内容は今までの駕籠真太郎氏の集大成的内容。でもスカトロはない。

 「巨人」をめぐる年代記にして現実の歴史とリンクさせたは良いのだが、かえって滅茶苦茶さが薄まってしまった。
 正直、駕籠氏の作品を今までどれくらい読んだかで今作の評価が正反対になるだろう。今作の要素は今までの単行本で出てきているため、僕なんかはどこかで読んだ感じが最後まで離れなかった。「巨人」というテーマで歴史を仕立てあげた手腕は見事なんだけど(さらに言うと、「巨人」とは何のメタファーかという考察も色々できるかもしれない)、常識を嘲笑うようなやりっ放しさがなくなったのは悲しい。

ランス9(アリスソフト、2014)

※この感想文の原案は2014年に……ランス03が出る前に書かれたふる~い内容です

 長期に渡るシリーズ物ってのは昔のファンを満足させつつ、新規ファンを取り込むのが難しいのだろうなと想像される。マンガとかであれば1巻あたりの発行ペースが比較的短いのでキャラブレ防止とか新規キャラの活躍とかを描きやすいのだが、このジャンルは、ねぇ。
 このジャンル(っていうかエロゲだけど)で1人の主人公を長く続けることの一番の難しさは性的なシーンとそれに関わるシチュエーションがマンネリになること。例えばツンデレキャラだったら一度デレさせたら逆にツンツンにする理由が難しく、次回作ではデレキャラによるラブラブを描くしかなくなる。ここらへん、ランスはうまく解決できており、ランスが自分勝手だからエロシーンがわがままになり、ツンデレキャラ――代表者は魔想さんだが――のデレデレシーンを極力排除できる。
 そのような平成ランスシリーズに関わるお約束が外れたのが今作であった。実質的にはかつての名作ママトトのリメイクであり、ランスシリーズには珍しいヒロインルートの存在(なんちゃって純愛っぽい雰囲気がランスと強烈な不協和音を醸し出している)はママトトだからで済ませられるが、中でもかなみちゃんルートと魔想さんルートの存在。うーん、やりやがったな。個人的には、ファンの層も古参から若者まで万遍なくいると思われるこの2人(かなみちゃんは現代風にいったらポンコツキャラだし、魔想さんはツンデレの代名詞)のルートを作るっていうのは思い切ったことだ。しかもそれぞれ、かなみちゃんはリアとの主従関係も含めて幸せになったし、魔想さんはナギとの確執を解決してる。この2人のキャラ設定上のランスに関わる動機をなくしちゃったことで、次回作へのアリスソフトの意気込みが伝わってくる(というか、少なくとも女神AL・ホーネット対ケイブリス・魔王美樹ちゃん・ルドラサウムという狂った伏線を全て解決しなきゃいけない次回作なので、人間サイドの問題を終わらせたんだろう)。

1.概要
 待望のヘルマン編だ。ランスIIIより出た設定で、同じく魔人や聖魔教団系もランスIIIが初出だっけ。設定上は人類最強を生み出し続けており、ファンの考察サイトやSSで散々妄想されまくった連中で、期待も高まるってものだ。
 ヘルマン攻略は鬼畜王でも描かれ、シィルが誘拐され新キャラが次々に仲間になりルートによっては仲間になるキャラもガラッと変わるという鬼畜王の中でも一番力の入った戦いだった。中でもヘルマンのステッセルは下衆中の下衆であり、プレイヤーのヘイトを集めまくったのだ。今作、時代は変わって昔の薬漬け近親行為なんて表現できないが、まあまあ頑張っている。さすがに鬼畜王以来ユーザーの想像をふくらませ続けたキャラたちのシナリオであるわけで、キャラの過去や回想シーンがちゃんと描かれている。ゼスキャラやJapanキャラの来歴が不明なのに比べれば違いは明らかだ。とはいえ、肝心のミネバやアリストレスへの書き込みが薄かったのは痛い。特にミネバはさんざん最強最強と煽っておきながら、終盤まで存在感が薄かった。前作ランクエでカラーの森に侵攻させて部下をも生贄に捧げた憎たらしさに比べたら、ラング・バウ防衛のために飼い殺しにされたミネバは彼女らしくないと感じた。ちなみにニコ動のコメントなどでは、「ランスより弱いリックに勝てないロレックスに負けたミネバ」(文言はうろ覚え)的な評価をされちゃっており……うーん、もったいない。シナリオ設定の根幹を崩すことを言ってしまうが、ヘルマン軍本体と出会わないように立ちまわっていたため重要な敵の末路がテキストで処理されてしまったのは痛かった。正直、プレイヤーがランス本編に求めているのは国を引っ掻き回し縦横無尽に駆け回る爽快感であり、今作みたいに戦術・戦略が求められる戦いとは合わない印象を受けた。さらに魔人が出ないから国家規模の災厄を描けず、結果としてこじんまりした印象になってしまった感じ。

 と言っても面白くないわけじゃなく、ヒロインルートや真エンディングを見ると、敵が倒せなくて苦労した思い出などが蘇る。シーラルートのバレンタインは燃えたし、倒せなくて何度もリセットかけた。戦闘も延々と敵がスポーンし、初見は全滅を覚悟したのに何とかクリアできるという絶妙な難易度で何だかんだでコンシューマと比べても遜色ないと思う。
 序盤で仲間が続々と集まるシーンはパットンが慕われていることが見て取れて、ランスとの対比が面白い。新規キャラも多いし鬼畜王から設定を変更されたキャラもいたが、短いテキストながら性格を一発で把握できる言葉遣いの妙は他のゲームメーカーも見習うべき。
 初回クリアした後でさっさと個別エンディングを見たいというプレイヤーの心情がわかっているのか、ヒロインシナリオでは戦闘が極力省かれているのもうれしいところ
 なので、繰り返すが面白いのだ。不満を持つ人が書いた長文の感想であってもいかに彼/彼女がこの作品を楽しんだかがとうとうと書かれている。
 だけど。
 上で書いたように、だけど何か足りないのだ。たぶん人によって、なくても構わないところと遊びたかったところが違う。不満たらたらの人(でも同時にこの作品が面白いことを認める)・不満があっても全体的に満足した人・普通に満点の人がいる。僕は不満があっても全体的に満足した人だが、それではもっとボリュームを多くした方が良いかと問われると、それも微妙に違う。RPGならともかく、マップを使ったシミュRPGならば1周あたりのプレイ時間は今作くらいのほうがちょうど良い。こんな感じで何が足りないのか直接的に書けないのが今作を貶すにしても長々と長文になる原因かもしれない。

2.シナリオ
 話をシナリオ面に移すと、そんなこんなで伏線とされた聖魔教団関連は微妙。シナリオ中で知ってる人が数名しかいないこともあってかあまり言及されなかったのは痛い。ランスシリーズの新規プレイヤーにとっては聖魔教団なんてチンプンカンプンだったろうから会話に出さないのはそれはそれで熟考の結果だとは思うが、だったら完全にカットしたほうが良かったかもという気がする。というか、聖魔教団は今までだって設定上でさんざん語られただけなので今作のシナリオには噛み合ってないと思う。正直、ヘルマンはミネバが皇帝になるまでの人間ドラマをユーザーからは期待されていたため、聖魔教団の遺産というストーリーとは相性が悪かった。ステッセルも生まれや秘密に比べて動機が異様にこじんまりしてたし。

<ランス03プレイ後追記>
 ランス03と対比すると、何となくスタッフがやりたかったことが見えてくる。パットンを主人公にした人間ドラマを描きたかったのであり、そのために人間離れした能力を持つ魔人は出せなかったのだろう。ヘルマンの人間に聖人君子はほぼいない。誰もが何かしらの打算で動き、ヘルマン革命は無数の動機の結果でしかない。それを最も良く表してるのがアリストレスの策であり、コンバートに裏切られるのもまあ仕方ない。ヘルマン上層部は醜いけどある意味で人間らしいエゴの群れである
 対して、魔人はランス6で描かれたようにその手の感傷を簡単に潰せる存在だ。「ヘルマン」革命を描くには不向きであり、たぶんユーザーから文句を言われるの覚悟で作ったんだろうなあと思った。
<追記終わり>

3.ママトトについて。
 ママトトリメイク……ではあるものの。個人的にはもっとママトト成分を出しても良かったと思う。どこかのサイトの感想でも書かれていたが、カッバハーンが出なかったのは痛い。あと、闘神MM戦で盾の全体攻撃でカットインされたキャラ(パンドラ?)はさすがに唐突すぎた。あと、ママトトならキッズを出して欲しかった。
 それはともかく、今作はママトトリメイクなのでいわゆるシミュレーションRPGなのだが、前作ランクエと比べるとゲームボリュームを増やし辛い印象を受けた。もちろんできないことはない。ままにょにょみたいにフリーで延々ダンジョンに籠もれるモードを搭載すれば良い。が、まあやはり素直なRPGだったランクエよりかはゲームシステムの限界が見えやすい。少なくともランクエでレベル200にして無双するみたいな楽しみ方はできなさそうだ。

4.ヒロイン
 運命の女が量産される現象は日本のサブカルチャー全体で見ても注目すべきだろう。そこらのハーレムマンガやラノベのフラグの立ちっぷりなんて軽く吹き飛ぶレベルだ。

・シーラ
 ペルエレの方が魅力あったな。シーラはいわゆる理想的な従順なお姫様なんだが、逆にあまり美味しくないというか。ランスを慕うお姫様は既に香姫がいるんだよな。鬼畜王の設定だとシーラに救いがないから良き改変だったが、印象が薄い。アリスソフトってこの手のおとなしいキャラは苦手なのかな。リアの気持ちのよいめちゃくちゃさ、マジックの類型的とはいえツンデレ、妹属性の香姫に比べると霞んでしまう。
 シナリオ的にも帝政を終わらせて大統領制っていう聞いたことがある物語。しかも大統領に何の実績も経験もないシーラが選ばれるのは冷静に考えるとまずいんじゃないかな。せめてウルザクラスの経験は必要かと。
 それはともかく、小心者で怠け者でズルくて、でも優しさも同情心もあるペルエレはセリフを読んでも立ち絵を見ても楽しかった。こういう人って僕以外にもいると思う。
 戦闘では回復も攻撃もとにかく射程が長いので攻撃全振り、もしくは最低限に粘りを上げるだけで強烈な単体用遠隔攻撃機となった。

・かなみちゃん
 上にも書いたとおりリアとの伏線も解決され、幸せになり、しかも戦闘でも使える。やったね、かなみちゃん! こんなに良いことづくめじゃ次回作での反動が怖いけど。
 それはともかく、やはりリアがかなみちゃんシナリオの要だろう。自分でランスにあてがっておいて、いざ飼い犬に手を噛まれるとブチ切れて戦争に突き進む暴走具合は見てて楽しい。途中からヘルマンの話を消し飛ばすように暴れるのははさすがにランスシリーズ最古参だけある。
 今作のリアはとても魅力的で、食って掛かるときもかなみちゃんをランスに盗られて怒っているように見える。そもそも責める相手だってかなみちゃんじゃなくてランスがメインだったし。そんでもって、結局は最後にかなみちゃんを許したりするのが誰もが経験したことのある人間的なわけの分からなさで魅力なのだ。そうなんだよね、時間がたって立場も変わったら怒りよりも相手と疎遠になるのが辛くなるんだよね。
 かなみちゃんは安い女というか、途中からチョロさが加速した気がする。ちなみに戦闘では爆弾持って敵をすり抜け、必殺技の範囲も広いのでレンジャー系最強だと思う。

・魔想さん
 何を隠そうナギシナリオ。ナギはもうケッセルリンクの元でしか救われないと思ってたから嬉しいサプライズ。鬼畜王で魔想さんかナギのどちらかしか仲間にできないことに不満を抱いたファンの心情を汲んだアリスソフトのサービス精神は素晴らしい。
 戦闘では熟練度による攻撃範囲拡大と射程無限大直線の必殺技が強烈。特に攻撃範囲拡大は戦術に組み込めるレベルで発動する。肉体的には貧弱だけど。

・チルディ
 アミトス&ガームロアシナリオと言っても過言ではなかった。今作の中で僕の好きな個別ルートはかなみちゃん・魔想さん・チルディ・ピグなんだが、全員良きサブキャラ・ライバルキャラがいることが共通している。っていうか、ランスというかアリスソフトは個別キャラへの書き込みがどうしても不足しがちなのでヒロインを動かせるサブキャラがいればシナリオが一気に面白くなる傾向がある。
 チルディシナリオはまさにそうで、チルディ自身はヘルマン革命とは何の関係もないただのリーザスからの派遣労働者だ。シナリオを動かす力はないのだが、アミトスとガームロアに出会い、ヘルマン革命が成功し、成長物語というテーマも出せた好例。ランクエから遊んだ身としては、チルディの内面の変化がはっきりわかり(ランス9だけしか遊んでないと微妙かも)、好感度が上がった。チルディの強さが描かれないため出来の悪いシナリオだと強さが不明な割にサブキャラたちから讃えられる俺tsueeeキャラになりがちなのだが、エンディングでもまだまだ発展途上で、だから様々なキャラが彼女に期待をかけるという構図になってよかった。
 戦闘ユニットとしては溜め→必殺技が対単体で狂ったダメージを出すので便利だった。バレンタインのHPを半分に減らしたのには驚いたよ。熟練度による再行動率も十分に高く、上位のアタッカーだった。

・千姫
 Japanキャラではランクエの影響もあって香姫が謙信か毛利三姉妹しか印象に残っていなかったので、だれだこいつって感じだった。そんなキャラをヒロインに抜擢するアリスソフトのセンスは面白いんだけど、時々ついていけないなあ。全シナリオクリアした後でも千姫の立場って別のキャラでもいけるんじゃ? という疑念がつきまとう。そんなキャラをヒロインにして、ランスの子供を宿させたのは面白いんだけど……。
 戦闘ユニットとしては粘りが異様に高いのと近接戦闘なのに射程があるので便利。ただ、粘りが高すぎてBADエンドイベントが難しかった。

・ピグ
 オノマ博士シナリオ。アリスソフトでお馴染み悪ノリの無茶苦茶キャラが暴れまわるストーリー。ピグがプレイヤー視点から物語にツッコめるキャラなのも相まってひどい(褒め言葉)ストーリーだった。まさに「ヘルマン革命どこ行った」。
 オノマ博士が言った、人類が滅びた後の支配種族=イカってのは次回作のルドラサウム編に繋がるのかなと一瞬考えたが、たぶん関係ないだろう。
 個人的にはピグってヘルマン革命ともそれまでのランスシリーズとも関係がないので最もいらないキャラだと思っていたが、オノマ博士なら仕方がない。デビルミネバが現れたけど仕方がない。いつの間にかヘルマン革命という名目が消えてたけど仕方がない。変身オノマ博士の倒れるモーションが仮面ライダーの怪人っぽいけど仕方がない。ピグルート最高。

・ミラクル
 ランスが執事になったり髭になったり禿げたりするシナリオ。主人公とヒロインが老けた姿を描くなんて昔じゃ考えられなかったぞ。
 ヒロインの中ではミラクルとピグだけが完全新規で(シーラは鬼畜王以来のレギュラーと言っても良いでしょう)、しかもミラクルについてはライバルとなるキャラもいないので、その分描き込みが濃かった。なんちゃって純愛的な流れだった。シリーズのラスト近くでこんなキャラを出して収拾がつくのか?
 魔法使いだけど回避が高かった。でも体力がないので敵の真ん中には特攻できない悲しさ。

5.終わりに
 この章はランス03終了後に書いているが、リーザス側のヘルマンへの恨みを書き込んでいれば神だったと思う。ランス3(または03)で魔人を引き連れ国土をぐちゃぐちゃにされた恨みをチルディあたりが吐き出し、それでもヘルマン革命を成功させるといった内容のほうが今から思えば過去作との繋がりを感じられたと思う。なんにせよ、2016年の今年はランス完結編だ。どんな内容であれ、楽しみ。