Tellurは、……現在色々物色中です。

「シュガー・ラッシュ:オンライン」(リッチ・ムーア監督、ウォルト・ディズニー製作、2018)

2019年1月18日  2019年1月18日 
変化するということへのポジティブさ・肯定的な描写に対し、変化を拒否することへの否定的な展開が極めてストレートだった作品、というところか。たぶん昨今のトランプ現象を念頭に置いているんだと思う。社会全体が「変化」することについて基本的に僕は肯定的なんだけど、個人の「変化」を強制することはちょっと気分良く見れなかった。正直、今作を見る限りではたとえバックラッシュと言われようと、「変化」は急すぎると判断せざるを得ない。  ストーリーは、前作で友情を育んだ少女と大人の男(明言しないけど、描写を見る限り恋愛だよね……)だが、少女が住んでいたゲーム機が壊れたので修…

「親がうるさいので後輩(♀)と偽装結婚してみた。」(コダマナオコ、一迅社、2018)

2019年1月18日  2019年1月18日 
正直、僕が昨今の百合ブームに乗れないなと思っているのは、百合というものが単なる萌え族のおかずでしかないことが透けて見えるからなのだ。  アメリカを中心に起こっている性的マイノリティのムーブメントは現実問題として性的マイノリティがマジョリティよりも権利を制限されていることに発しており、その運動は重要だと思う。それに比べて日本の百合ブームはどんなに性的マイノリティを肯定的に描いていてもマジョリティ(いわゆるヘテロセクシュアル)のおもちゃという枠組みが強固に残っているし、そもそも彼女らが直面している現実的な問題を描く気がなく「萌え」として消費している(女性…

「ひもてはうす」(石ダテコー太郎監督、バウンスィ、2018)

2019年1月18日  2019年1月18日 
石館監督の作品は好きで、極力見ていたが、今作は期待外れだった。  その大きな原因は、1話15分という放送時間に対し、レギュラーキャスト6人と今までで一番の大所帯となっており、キャラクターもキャストも掘り下げが不足していたからである。そもそもキャストは石館監督初である洲崎氏を除けば全員2回目以上の出演であり(最小公倍数では「gdgd妖精s」+「てさぐれ!部活ものシリーズ」。最大公約数では「gdgd妖精s」+「直球表題ロボットアニメ」+「てさぐれ!部活ものシリーズ」+「キュートランスフォーマー」と書けば新しさがないのがわかるだろう)、キャストの掘り下げは…

「トランクの中に行った双子」(ショーニン・マグワイア 著、原島文世 訳、創元推理文庫、2018)

2019年1月14日  2019年1月14日 
この作品は「 不思議の国の少女たち 」の外伝的続編であり、前作である「不思議の国の少女たち」を読まなければ内容が理解できないと思う。  この作品の問題点は、「トランクの中に行った双子」単体では世界観がわからず、面白さが前作に依拠してしまっていることである。前作では異世界から戻ってきた子供たちというテーマで異世界を描写し、逃避文学と現実とのすり合わせを丁寧に物語にしていたのだが、今作は悪い意味で単発のエピソード集にしか過ぎない。4年という年月を薄めの文庫本1冊にまとめるのは難しかったのだろうと同情するが、Aという出来事がありました、その数年後、Bという出来…

「NOVA 2019年春号」(大森 望 責任編集、河出文庫、2018)

2019年1月10日  2019年1月10日 
なんか懐かしい名前だ。最後のNOVAはもう10年ほど前なのか……。日本を代表するSFアンソロジーの1つだったイメージがあるので、今後も続いてほしい。  最初の「 やおよろず神様承ります 」(新井素子)。どうも僕は新井氏の一人称文体とは相性が悪いことがわかった。短編集のテーマ以前に文体が合わなかった。いちいち地の文でツッコミが入って痛い上に話が進まなくてつまらない。玄関の呼び鈴が鳴って2、3会話して不思議ちゃんだったからとりあえず扉を開けるだけの描写で3ページ使うのって無駄じゃない? 昔はスレイヤーズとかその亜種の一人称小説を読んでいたが、この作品が無理と…

「チェコSF短編小説集」(ヤロスラフ・オルシャ・jr. 編、平野 清美 編訳、平凡社ライブラリー、2018)

2019年1月10日  2019年1月10日 
チェコのSFの歴史を俯瞰してみた。もちろんこの1冊で全てがわかるわけではないが、おとぎ話のイメージがあり、あのカレル・チャペックを生んだチェコという国のSFを味わってみたかったのだ。  「 オーストリアの税関 」(ヤロスラフ・ハシェク)は1912年に書かれた作品。SF的なテーマはサイボーグなのだが、読者としては税関におけるやり取りが印象に残る。どうやら作者はそもそも関税を批判する目的でこの作品を描いたらしく、人工物だらけで税関に引っかかる肉体というアイデアはその副産物だったらしい。風刺のために空想度高めの舞台を用意するチェコ人すごい。というわけで、この短…

「バッドアート展」

2019年1月10日  2019年1月10日 
東京ドームシティ内で開催されている「 バッドアート展 」なるものに年末行ってきた。恥ずかしながら、このような収集が真面目に行われていると知らず、また海の向こうでこの手の作品だけで美術館を作ったことも知らなかった。  どういった作品があるのか興味があって行ったわけだが……。  バッドアートの定義がわからないので正直、ムーブメントにはならないだろうなと感じた。一応、美術館の運営者はそれなりの基準を持っているらしく子供の作品は対象外だし(アール・ブリュットでまとめられるアウトサイダーアートも同様に対象外ということか)、地方のお土産なども対象外らしい(雑誌の宝島…