Grand Cru
2011年5月29日
2011年5月29日
eggertspiele
人数:2~5人
時間:90分
デザイナー:Ulrich Blum
★★★ (3/3)
事業を行う上で借金(借入金)は必須である。事業全てを自分自身(資本)で賄うことは通常選択されない。なぜなら、例えば製造業であれば機械装置や建物・土地が必要となるが、それらを株などで集めようとすると莫大な手間がかかるからだ。それに比べたら、たとえ毎年利息を払うとしても借金に頼るほうが簡単なのだ。
ボードゲーム・PCゲーム問わず、この手のリソースマネージメント系で借金について深く考えているゲームはあまりない。多くは一時しのぎの金額であり、いつか、多くはゲーム中盤では借金を返すのがデザインの基本になっていると思う(断言できるほどの数を遊んではいないが、あえて言ってみる)。
それに対し、このグラン・クリュはワイン農園を経営するリソースマネージメントで見事なまでに借金に対して意味を与えている。利息が返せるうちは新たに借金を行おうが、逆に借金を返そうが、利息だけ払い続けようが構わない。借金が影響を与えるのは最後の得点計算だけである。
【遊び方】
1ターンは4ラウンド以上で構成される。1ラウンドごとにプレイヤーのアクションが1回ずつ行われる。
各アクションは、5種類のぶどうタイル+特殊タイルの内1つの競りにエントリーをすること、競りに勝ちタイルをもらいぶどうを実らせること、実ったぶどうを1つ収穫すること、ワインを販売すること、売却価格をつり上げること、特殊タイルを使用することのどれかである。
4ラウンド以降、1人のプレイヤーが実ったぶどう全てを収穫したラウンドでターンが終わり、収支フェイズとなる。
各プレイヤーは名声を持ち、ワインの売却数に応じて名声を受け取る。この名声を消費することで先着順でお金を得たり、ワインの価格を上げたりと色々できる。
最後に、利息の返済が待っている。ゲームを始める際には必ず借金をしなければならない。資本が全くないのだ。そして借金額に応じて利息も上がっていく。ワインによっては対応するぶどうを収穫後、4年(4ターン)経たないと売ることができない品種も存在し、それまでの利息をどうするかが勝負となる。それが、追加借金の存在だ。とりあえず新たに借金をしてでも利息を返せている内はゲームが続く。借金の限度額があり、それを超える借金(=利息が返せない)をしなければならなくなったプレイヤーは自動的に敗退。そこでゲームが終わる。逆に借金を返すこともでき、誰かが借金を全返済した時点でもゲームが終わる。
点数計算は手持ちの現金+タイル売却額-借金。借金を全て返せても、限界まで借金を行い大量の現金を持っているプレイヤーに勝てないこともある。
【感想】
僕が参加したゲームでは見事に戦略が分かれた。僕入れて4人。1人は収穫してから4年(4ターン)経たないと売ることができない品種を3タイルほど購入していた、もう1人は2種のぶどうを1タイルずつ、しかし1ターンで1回だけ収穫したら2倍になる特殊タイルとワインを2個売却できる特殊タイルを持っていた。結果、3個のぶどうを収穫して全て売却するのに合計4ラウンドで行う恐ろしい農園が誕生した。残りの1人と僕はバランス型。僕は収穫して1年2年3年かかるものをそれぞれ1種ずつ、そして1回で2種類のぶどうを収穫できる特殊タイルを所持していた。ただしぶどうを収穫してワインを売却するのに5ラウンドかかる。もう1人のバランス型は4年ぶどう2タイルと1年ぶどう1タイルを特殊タイル盛りだくさんで回していた。
ゲームは4ラウンド農園を創り上げた方の勝ち。借金を全て返済された挙句に42金も資産を持っていた。圧勝。
僕は借金と資産が全て相殺され手持ちが0金に。これでも2位。残りの2人は、途中から4年ぶどうが回り始めたが、同時に借金額が相当あり、マイナスとなった。
このゲームはより1ターンを早めに終わらせられる人がゲームを握ると感じた。タイルの引きというか競りの運にもよるが(競りには即決ありなので)、より少ないタイルでより高額なワインをより高値でより数多くより手順を少なく売る人が勝てる。もっとも、利息と借金元本の返済を耐えられることが条件だが。
実はぶどうには0年ぶどう(収穫したターンで売却できる)が存在するが、手順がせわしなく割に売値が低すぎる。かと言って4年ぶどうだと4ターン利息支払に耐えるのがきつすぎると思う。それだけ追加借金をすることとなり、利息も増えてしまう。1年~3年までのぶどうを植えるのが良いと思う。また、利息と借金の限界点は5借金まで。1借金あたり7金になるが、5借金で利息は7金。それ以降、借金が1増えると利息も1増える。5借金から3借金追加すると21金もらえるが、利息は10金になる。つまり1ターンでの収入はあるものの、2・3ターン以上の視点で見ると極めて振りになるという。
このゲームが優れているのはここだな。借金は必要だ。しかし計画立てて必要最低限にしないと結局は利子の分損をする羽目になる。現実世界における個人での借金も恐らくは同じだろう(借金はクレジットカードしかしたことないからわからんw)。
同時にこのゲームの借金という概念は個人経営のものしか想定していないことも顕にしてしまっている。このゲームにおけるぶどうって安いんだよ。それこそ1金で買えたりするくらいに。高くても7金。頑張れば4年ぶどう酒を売ることで賄えるくらいだ。一方で通常の企業(と言っても僕が知っているのは重長高大的な製造業だが)って投資(例えばぶどうを買うこと)に大量のお金がかかる。だから借金がお金を融通する1つの手段になっているわけで。
製造業にとって悩ましい問題は、借金をすると利子がもったいないけど、借金をしなかったら投資ができないことだ。グラン・クリュだったら、ぶどうが最低21金する状況を思い浮かべたらわかりやすいだろう。その分利息を下げないとゲームバランスが死ぬけどw
個人単位での経営ゲームとしてはよく出来ていると思う。一番手が多少有利すぎる感じがあるが、細かい話だ。自転車操業をする経営者の気分が感じられて勉強になった。僕は絶対に起業とか責任ある立場にはなれないし、目指したくない種類の人間だとわかった。
で、先にも述べたように投資にかかる最低価格が異常に値上がり、そして利息がかなり安くなった上級ルールを作ってみてはどうだろう、Ulrich Blumさん。こうすると工業系メーカーのシムっぽくなるとおもうよ。
人数:2~5人
時間:90分
デザイナー:Ulrich Blum
★★★ (3/3)
事業を行う上で借金(借入金)は必須である。事業全てを自分自身(資本)で賄うことは通常選択されない。なぜなら、例えば製造業であれば機械装置や建物・土地が必要となるが、それらを株などで集めようとすると莫大な手間がかかるからだ。それに比べたら、たとえ毎年利息を払うとしても借金に頼るほうが簡単なのだ。
ボードゲーム・PCゲーム問わず、この手のリソースマネージメント系で借金について深く考えているゲームはあまりない。多くは一時しのぎの金額であり、いつか、多くはゲーム中盤では借金を返すのがデザインの基本になっていると思う(断言できるほどの数を遊んではいないが、あえて言ってみる)。
それに対し、このグラン・クリュはワイン農園を経営するリソースマネージメントで見事なまでに借金に対して意味を与えている。利息が返せるうちは新たに借金を行おうが、逆に借金を返そうが、利息だけ払い続けようが構わない。借金が影響を与えるのは最後の得点計算だけである。
【遊び方】
1ターンは4ラウンド以上で構成される。1ラウンドごとにプレイヤーのアクションが1回ずつ行われる。
各アクションは、5種類のぶどうタイル+特殊タイルの内1つの競りにエントリーをすること、競りに勝ちタイルをもらいぶどうを実らせること、実ったぶどうを1つ収穫すること、ワインを販売すること、売却価格をつり上げること、特殊タイルを使用することのどれかである。
4ラウンド以降、1人のプレイヤーが実ったぶどう全てを収穫したラウンドでターンが終わり、収支フェイズとなる。
各プレイヤーは名声を持ち、ワインの売却数に応じて名声を受け取る。この名声を消費することで先着順でお金を得たり、ワインの価格を上げたりと色々できる。
最後に、利息の返済が待っている。ゲームを始める際には必ず借金をしなければならない。資本が全くないのだ。そして借金額に応じて利息も上がっていく。ワインによっては対応するぶどうを収穫後、4年(4ターン)経たないと売ることができない品種も存在し、それまでの利息をどうするかが勝負となる。それが、追加借金の存在だ。とりあえず新たに借金をしてでも利息を返せている内はゲームが続く。借金の限度額があり、それを超える借金(=利息が返せない)をしなければならなくなったプレイヤーは自動的に敗退。そこでゲームが終わる。逆に借金を返すこともでき、誰かが借金を全返済した時点でもゲームが終わる。
点数計算は手持ちの現金+タイル売却額-借金。借金を全て返せても、限界まで借金を行い大量の現金を持っているプレイヤーに勝てないこともある。
【感想】
僕が参加したゲームでは見事に戦略が分かれた。僕入れて4人。1人は収穫してから4年(4ターン)経たないと売ることができない品種を3タイルほど購入していた、もう1人は2種のぶどうを1タイルずつ、しかし1ターンで1回だけ収穫したら2倍になる特殊タイルとワインを2個売却できる特殊タイルを持っていた。結果、3個のぶどうを収穫して全て売却するのに合計4ラウンドで行う恐ろしい農園が誕生した。残りの1人と僕はバランス型。僕は収穫して1年2年3年かかるものをそれぞれ1種ずつ、そして1回で2種類のぶどうを収穫できる特殊タイルを所持していた。ただしぶどうを収穫してワインを売却するのに5ラウンドかかる。もう1人のバランス型は4年ぶどう2タイルと1年ぶどう1タイルを特殊タイル盛りだくさんで回していた。
ゲームは4ラウンド農園を創り上げた方の勝ち。借金を全て返済された挙句に42金も資産を持っていた。圧勝。
僕は借金と資産が全て相殺され手持ちが0金に。これでも2位。残りの2人は、途中から4年ぶどうが回り始めたが、同時に借金額が相当あり、マイナスとなった。
このゲームはより1ターンを早めに終わらせられる人がゲームを握ると感じた。タイルの引きというか競りの運にもよるが(競りには即決ありなので)、より少ないタイルでより高額なワインをより高値でより数多くより手順を少なく売る人が勝てる。もっとも、利息と借金元本の返済を耐えられることが条件だが。
実はぶどうには0年ぶどう(収穫したターンで売却できる)が存在するが、手順がせわしなく割に売値が低すぎる。かと言って4年ぶどうだと4ターン利息支払に耐えるのがきつすぎると思う。それだけ追加借金をすることとなり、利息も増えてしまう。1年~3年までのぶどうを植えるのが良いと思う。また、利息と借金の限界点は5借金まで。1借金あたり7金になるが、5借金で利息は7金。それ以降、借金が1増えると利息も1増える。5借金から3借金追加すると21金もらえるが、利息は10金になる。つまり1ターンでの収入はあるものの、2・3ターン以上の視点で見ると極めて振りになるという。
このゲームが優れているのはここだな。借金は必要だ。しかし計画立てて必要最低限にしないと結局は利子の分損をする羽目になる。現実世界における個人での借金も恐らくは同じだろう(借金はクレジットカードしかしたことないからわからんw)。
同時にこのゲームの借金という概念は個人経営のものしか想定していないことも顕にしてしまっている。このゲームにおけるぶどうって安いんだよ。それこそ1金で買えたりするくらいに。高くても7金。頑張れば4年ぶどう酒を売ることで賄えるくらいだ。一方で通常の企業(と言っても僕が知っているのは重長高大的な製造業だが)って投資(例えばぶどうを買うこと)に大量のお金がかかる。だから借金がお金を融通する1つの手段になっているわけで。
製造業にとって悩ましい問題は、借金をすると利子がもったいないけど、借金をしなかったら投資ができないことだ。グラン・クリュだったら、ぶどうが最低21金する状況を思い浮かべたらわかりやすいだろう。その分利息を下げないとゲームバランスが死ぬけどw
個人単位での経営ゲームとしてはよく出来ていると思う。一番手が多少有利すぎる感じがあるが、細かい話だ。自転車操業をする経営者の気分が感じられて勉強になった。僕は絶対に起業とか責任ある立場にはなれないし、目指したくない種類の人間だとわかった。
で、先にも述べたように投資にかかる最低価格が異常に値上がり、そして利息がかなり安くなった上級ルールを作ってみてはどうだろう、Ulrich Blumさん。こうすると工業系メーカーのシムっぽくなるとおもうよ。
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