2012年8月25日土曜日

プロメテウス(リドリー・スコット、2012)

 エイリアンやブレードランナーで名を馳せたリドリー・スコット監督の最新作であり、エイリアンとも関連のある有名作……との評判。もちろん僕も監督の名前だけで見に行った口。だってリドリー・スコット監督が人類の起源をエイリアン風味に描くなんてわくわくするじゃない。

 映画よりも驚いたのは、僕も含めて観客が中年~初老の男1人しかいないこと。しかもガラガラ。その映画館では先行公開されてたので興味のある人はすでに視聴済なのかな、と思ったんだけど、思ったよりもいなかった。特に子供がいなかったのがショックだった。僕の勝手なイメージでは宇宙、SFなんだからガキがわんさか押し寄せてキャーキャー騒ぐ……と思っていた。
 閑話休題、映像は面白かった。特にオープニングの大自然の光景と壮大な音楽は一気に引きこまれた。それからメカ。プロメテウス号も宇宙服もビークルもどれも格好良い。日本のマンガ・ゲームにはないセンスの良さがあり、ハリウッド映画は見るべきものだなーと改めて確認。悪女悪女と評判の高かったヴィッカーズは全く悪女でないことに驚き。多少策略家なだけじゃん。映画って過剰に熱血漢で人道的な人間が主人公になりやすいから、それに対するセカンドオピニオンキャラだと思うけどな。すっげー美人だったからスノーホワイトも見ようと思った。
 そういえば船内のテクノロジーでタッチパネルを使っていたシーンが結構あったが、映画で見ると笑いそうだった。僕の感覚では、タッチパネルって手塚治虫とかが未来テクノロジーとして描いていた印象があり、彼くらいの時代ならボタンやレバーなどの操作デバイスの発展系としてタッチパネルは十分にSFだったろう。僕も子供の頃は未来っぽく思ってたさ。でもiPadと共に暮らしてる今の僕にとっては居心地の悪い未来っぽさを感じたわけだ。

 とまあ、意図的にストーリーに触れずに感想を書いた。正直、ストーリーは首をかしげたくなるものであり、なんか全部で8時間ある作品の中から中盤の2時間目と3時間目と4時間目を抜き出して無理やり2時間に収めたようなものだった。謎が多いと評判のブレードランナーを最初に見た人はブレードランナーに対してどういう感想を抱いたのだろう。僕はブレードランナー自体はそれはそれで完結していると思っており評価しているのだが、このプロメテウスに関してははっきり言って単品では完結している作品だとは思えない。ラストシーンが似ている(「俺達の戦いはこれからだ! あの星に殴り込むぜ!」)バック・トゥ・ザ・フューチャー1と比べると、作品内にミステリーを置く作風か否かの違いはあれど、プロメテウスは説明できていない要素が多すぎると思う。
 という訳で、ストーリー面は下の「続きを読む」で。激しくネタバレ有り。
(ここから先は公開中の映画に関するネタバレなので隠します)
 いやね、パンフレットにも書かれているとおりオープニングのシーンでエンジニアが飲むリキッドメタル。オープニングだけならエンジニアのDNAに作用し、エンジニアが水に溶けることでそれが地球人類になるのかな、と推測できるわけだ。でもエンジニアの宇宙船にも大量に載せられており、ストーリー中ではそれらを地球に持ち運ぶと説明されていた。登場人物はリキッドメタル(劇中では有機物=DNAの塊に思えた)によってクルーを殺されたことから生物兵器だと解釈しており、パンフレットにもそのように書かれていたが、それだとオープニングシーンとの整合性が取れないよね。僕としては、あのリキッドメタルは中立的なもので、生命に作用して変化を引き起こすものだと考えている。リキッドメタルのDNA(変な表現だが)で受精したエリザベスが急激に育つクリーチャーを産み、さらにそのクリーチャーがエンジニアに寄生することで後の「エイリアン」の幼生が誕生する。生物兵器なのであれば子供が作れる必要はない、というかさっさと皆殺しにするほうが効率が良いわけで、そう考えるとリキッドメタルは進化を引き起こすモノなのかなと帰り道にブックオフで真ゲッターのマンガを読みながら思った。当然エイリアンは進化した人類、もしくは神そのもので。この解釈ならリキッドメタルの壺がエンジニアにとってさえ危険なのに剥き出しのままエンジニアの頭部が切断された部屋に大量に置かれていた理由が説明できる。エンジニアにとっては兵器の認識がなかったのでこの部屋に逃げ込もうとしたわけだ。ところで、チャーリーたちがヘルメットを脱ぐシーンにはツッコミそうになった。人間についている細菌による生物汚染の危険性があるんだからヘルメット脱いじゃダメだろう。
 まあ、そもそも論として各遺跡の壁画や陶器に描かれている=人類への招待状とは短絡的すぎだよなーと見ているときから思った。シュメールとかメソポタミアとか果てはスコットランドの島。場所も時間もバラバラでそれでもエンジニアについて言及されている……それどころか言語すら古代人類とエンジニアとでは似ているらしい。じゃあ何でそれらの文明は滅びたの? という疑問が当然出てくるべきであって。と言うか、古代人類が意味わかってたのかは別として天空からやってくる人々という認識はあったわけだ、エンジニアは。それくらい交流があったのだから……それなんてオーヴァーロード?
 物語の要は4種類の父と子の関係にある。エンジニアと人類、エリザベスの父、ピーターとデヴィッド、ピーターとヴィッカーズ。エリザベスの場合は親子関係は上手くいっていたものの、父は死んでおり、形見の十字架を身に付け、宗教に対する感覚を親子関係に持ち込んでいる。ピーターとデヴィッドはそもそもが作られた関係であり、デヴィッドは人間らしさを学習するため父殺しを決行する。オイディプスに代表されるように父親殺しというのは人類の成長の1要素として理解されており(ジョーゼフ・キャンベルとかの神話論にも出ていた気がする)、作中の人類の行動はエンジニア(=神)に対して父親と言うよりも先輩的に接しようとするものでありつまりは父親殺しを暗示しているとも取れる。それに比べればヴィッカーズとピーターは普通の親子のいがみ合いなので何とも言いようがない。
 そう、この物語の中でデヴィッドは全く意味不明な行動原理で動いている。映画にあるシーンだけだと、先の親子関係にある通り、眠っているエンジニアが凶暴になるのを知っていたと取れる。その上で父親を合わせたとも。でも一方で、こう回りくどい行動を取る必要はなかったと思うんだ。人類に対する父親殺しを決行するために自分を含めてクルーを犠牲にしてリキッドメタル入りのエンジニア宇宙船を起動させたと理解することも可能なんだけど(というかこの理解が一番素直なのかも)、先にも書いたように僕はリキッドメタルは兵器じゃないと考えてるし……。デヴィッドの言う父親殺しってのがピーターを殺すレベルでの即物的なものだとは思えないんだよな。それも人間以上に人間のことを研究し、「魂」や「幸せ」がないと内心ではどうあれ宣言するデヴィッドなんだから。そもそも彼が目覚めたエンジニアに対して行った説明が本当にピーターの言葉を仲介しているのか、そこからして怪しいが。人類を進化させることが使命とか思ってそう。
 残念なのはそれらシナリオ上の謎が多すぎて、説明もない上にエリザベスの活躍もあまりなかったことである。正直、僕はもっとエリザベスが決断してアクションを見せて、そんでもって地球に帰るか宇宙を放浪するかするのだと思ってました。実際はデヴィッドが行動してヴィッカーズがアクションして、エリザベスは目の前にある危機に対してキャーキャー騒ぐだけであった。いやまあ、デヴィッドによって超人類の父親にさせられ、途中で退場させられたチャーリーよりはマシかもしれないが、もう少し活躍して欲しかったと思う(余談だが、チャーリーはパンフレットでヤネック船長と同列の扱いを受けている。ヴィッカーズですらキャラ紹介が1ページあったのに、ヤネック船長とチャーリーは2人で1ページ。エリザベスの恋人役なんだからもうちょっとフィーチャーしてあげて……)。それもあってヴィッカーズの死からエンジニア強襲が中盤だと思い込んでおり、それで物語が終わったことに悪い意味で「もう終わってしまったのか」と感じたのだ。いやー他の映画だったら誰も助けに来てくれない→よーし殺るぞう→激しいアクション→エンジニア宇宙船自爆→しかしエリザベスの身体にはすでに第2の赤子が宿っており→溶鉱炉に自殺、の流れだと思う。あ、これはエイリアンの1と3がミックスされているな。

 そんな感じで僕の脳内で適当に補完しましたとさ。