2015年6月9日火曜日

「現代の民話」(松谷みよ子、河出文庫、2014)

 物語に絡め取られた知性の悲劇。
 民話について考察する本……と一見すると思えるだろう。しかし読み進める内に何かが違うことに気づく。
 第三章「抜け出す魂」以降ではっきりとわかるが完全にオカルト話のビリーバーになってる。それは民話の社会的背景や歴史的なモチーフを語らず個々の物語の登場人物に感情移入することでわかる。民話としては誰がどういう形で殺されたとか、どういう気持ちだったかとかそんなディティールは正直必要ないのだが恐らく著者の関心の的だったのだろう。
 また、文章の構造が半ばオカルト話の紹介集なので、民話の採取もどこまで網羅的なのかわからん。
 途中から現代民話と怪談の定義がされないまま、著者が実地で集めた怪談集になっていく。
 それが一番わかりやすく表れているのが第4章「土を喰う」(戦争体験談)。僕自身は民話というのはある程度人口に膾炙されたモチーフ(テーマやギミック)が登場するものであると考えている。つまり具体的すぎて一般化できないお話や物語の流れが独自のものは民話ではないと認識している。勝手に定義付けるなと言われるかもしれないが、逆にだからこそ変な実体験のお話と民話は切り離すべきと考えているのだ。

 はっきり言って池田香代子氏が白水社で出した「日本の現代伝説」シリーズに比べるとその差は歴然。
 諸星大二郎氏の作品に近い匂いがする。つまり創作物的な性格が強い。