2016年2月7日日曜日

「現代アラブの社会思想――終末論とイスラーム主義」(池内恵、講談社現代新書、2002年)

 この本は僕にとって思い入れが深い。
 2001年の同時多発テロ以降、イスラム教の関心が高まっていたが、初めてイスラムについて学んだ授業で読んだ本なのだ。
 確か当時、先生が数冊本を挙げ、学生が1冊ずつ好きな本を読み込み内容などを発表した。その時の僕の担当本が本書「現代アラブの社会思想――終末論とイスラーム主義」だった。

 この本の特徴としてはイスラム教に対する批判的視点がある。そのため授業で行われた他の学生の発表と僕の発表は温度が異なっていたと記憶している。
 他の学生は、イスラムってこんなんだよ、おもしれー、西欧中心主義はいかん、イスラムもみんながみんなテロに賛同しているわけではない……などと当り障りのないことを言っていた。まあイスラム教に興味を持って授業を選択したのだから好意的な意見になって当たり前か。一方で、僕はイスラムの中にテロを容認する思想の可能性、終末論の名の下の前近代的思想などそれまで授業で取り上げられなかった負の側面を発表した。結果、空気が凍った。まあ、イスラム教についてのネガティブな意見(特に終末論)なんて他の一般書籍にはなかったため、単に内容の紹介となってしまい深い議論も出来なかったのだが。
 今は池内氏の著作をもう少し読んだため、なぜ池内氏はイスラムを名指ししてテロや終末思想について本を記したのかわかったつもりだ。この本はイスラムに変なあこがれを持っている人こそ読むべきだ。少なくとも怪しい思想は他の宗教と同等レベルで存在している。西洋からイスラムへの偏見もあるように、イスラムから西洋への偏見も同様に存在する。異文化理解とはまずは正確な認識から始めるのだと思う。