2016年2月28日日曜日

「かわいい闇」(マリー・ポムピュイ&ファビアン・ヴェルマン&ケラスコエット、河出書房新社、2014年)

 初めて日本以外のマンガを読んだ。
 外国のマンガ、特にフランス系のマンガは絵に特徴があったりコマ割りが日本と異なるイメージがあり、なかなか手に取る勇気が出なかった。この作品はそんな偏見を砕いてくれ、他のいわゆるバンド・デシネも読もうかと思わせてくれた作品。

 僕が読む上で世界観に引き込まれた点はカラーであること。日本のマンガであれば冒頭のシーンなんかはモノクロでベタ塗りが多い空間になると思う。最近のマンガは絵が緻密になっており、一定以上の込み入った構図だと物体の位置関係が掴めないことが多かった。カラー絵だとそこら辺の問題が一気に解決でき、素晴らしい。そして今後、モノの配置を複雑にしたシーンを描く場合はカラーでなければきついのでは……とさえ思った。
 また、キャラクターの表情や造形が日本人に違和感のない画風なのも心強い。特に終盤、ソウルジェムが濁りきったオロールさん(主人公)顔に影が描かれ目のハイライトが消える絵柄はそれこそまどマギに出てきますと言い張っても問題ないくらい。バンド・デシネはアート系の絵柄だと思い込んでいたが、調べれば読みやすい(あくまで自分にとって)絵柄もあるんだね。
 キャラクターデザインは、終盤のオロールさんが本当に可愛かった。キャラ萌えはしない方だけど影の濃くなったオロールさんには萌えた。そう、この作品ははっきりと「萌え」を抱けるレベルの可愛らしさとキャラ立ちがある。

 アマゾンのレビューを見てもマンガとしての読みやすさやキャラの可愛らしさは言及されている。どうもバンド・デシネの中ではかなり日本人向きの作品っぽい。

 ストーリーはそもそもバンド・デシネが大人向き(子供向けではない)というのを知っていれば衝撃はあまりない。ショッキング系マンガは既に日本に大量にあるし、可愛い絵柄で残酷っていうのもオタクだったら数作品は挙げられるだろう。それこそ一部のエロゲなんかは男性向けの可愛いキャラが酷い目に遭うってのを売りにしているわけで。
 誤解のないように書いておくと、読み進めるにしたがって「うわあ……」という感情になってくる。僕は頑張ってるオロール萌えで読んでいたため、ヒエラルキー競争に破れ妖精仲間から逃げ出したオロールさんの姿に悲しみを感じた。食い物にされるオロールさんが不憫で不憫で気が滅入るので、一度読んだらとりあえず2、3日は間を空けたい。だが、妖精たちの行動は15少年漂流記的なサバイバルであり、自然が起こす春夏秋冬でしかない。必要以上に怖いだの気持ち悪いだのと褒める(この作品にとっては褒め言葉ではあるが)のもなんだかなー。

 むしろ僕が面白かったのは筆者へのインタビュー。冒頭の大オロールの死はフランス文化の中では児童ポルノに当たるんだとか。

p97
少女の死を扱うというのはフランスでは非常にデリケートな問題なんです……(中略)……彼女が死んでいるのは事実ですが、殺されたかどうかはわかりません。・・・・・・特に答えを決めていないんです。
pp..101-102
森の中での少女の死が語られています。これは小児性愛者による犯罪を想起させますから、フランスでは非常にタブーなテーマです。

 森の中での死体放置ってのが連想させるらしい。はあ、そういうもんなんですか。インタビューでは製作の背景にある「フランス文化」としか呼びようのないものが日本文化で育った僕を直撃する。こればっかりはぜひとも本を読んで欲しい。かわいい絵柄の日本人読者にとって特に問題にもならないストーリーの裏で文化の違いがこれでもかというほど出てくる。正直、本文よりもインタビューだのあとがきなどの方が読み応えがあった
 フランスマンガであるという事前情報があればの話だが、最高傑作。