2016年12月1日木曜日

「ペルーの異端審問」(フェルナンド・イワサキ、新評論、2016)

 面白い。え、これ、ノンフィクションという体のフィクションじゃなかったんだ。
 そう思えるほど自由奔放な奇人たちが描かれる。

 一般に異端審問というと、ガリレオだったりスペイン宗教裁判だったりと陰惨なものとして描かれがちで(もちろんこの作品でも裁かれた人は不幸な結末を迎えている)、その内容については二の次であった。
 この作品は暗いイメージの異端審問について、一部の極端な例かもしれないがとびっきり笑え、でも暗黒の時代でも動物的な衝動はあったのだとなぜか感動でき、さらに教会の権威が今より遥かに強かった時代にキリストと相思相愛だと言い張る女性が現れたりと不条理さにしんみりしてしまうような実際の裁判記録を小説として仕立て上げたものである。ちなみに欲情とか淫靡とか煽られてるけど、この作品自体はまったくエロスの欠片もありません。あくまで中世にも人間らしさはあったという題材として取り上げられたという印象を受けた。

 最初にノンフィクションという体のフィクション~と書いたけど、この作品は短編が十数話連なっており、それぞれの短編は小説というよりはルポルタージュに近い。教会が力を持っていた頃の変人をテーマにしており、会話文なんてほぼ出てこない。今の時代からしても変人度は高く、だから創作だろうと思っていたのだった(後書きを読むとどうも実際の裁判記録から構成したらしいので、その時点で本当にノンフィクションだと気付いた)。
 ある意味で、時代が時代だから単に異端として刑を受けたのだろう。現代でこんなことをしでかす人間がいたらマスコミが持ち上げて時の人にしてしまうんだろうな。
 意外と昔も今の人々とやってることは変わらないってことを知れてよかった。