2017年3月31日金曜日

「Sing」(ガース・ジェニングス監督、イルミネーション・エンターテインメント、2016)

 ヤバい、良い物語だ。単純にいろんな洋楽が流れる華やかで楽しい作品でもあるし、夢を追うことの辛さや諦めることの楽さと手に入れた時の嬉しさを描いた作品でもある。
 登場人物それぞれの葛藤というのは、人生を多少経験した人間にとってはどれも思い当たるものはある。劇場再興のためオーディション開催を決めたみたいに何の保証もないのにプロジェクトを見切り発車してしまったり、恥ずかしがり屋で人前で歌えないみたいにチャンスを手放してしまったり。でも彼らはちゃんと努力をしていて、それを隠すなんてことはしない。相応の実力もあり、人に見せる勇気も出し、努力もし続ける。だからこそ、オーディションと言うかたちであれ、最後には自分たちの手弁当という形であれ、他人も応援してくれお金には換えられない価値を手に入れる。アメリカンドリームについてこれでもかと言うほど丁寧に描かれた映画だと感じた。

 ストーリーは王道。少しずつ何か欠けたものを抱えている人同士が集まって、大舞台を立ち上げ、挫折し、でも自分のためだけに再度挑戦することでみんなの心を動かす。これが歌のコンテストという題材で描かれている。彼らが抱えている欠落は僕達にとって身近で、形は違えど経験したことがあるものばかりだ。唯一、あの羊の坊っちゃんは行動に緊迫性がなくあまり感情移入ができなかったがそれは些細なこと。
 憎たらしい敵役もいなく、ハッピーエンドになるか否かは自分の頑張りにかかる構成は、いまだに夢を見ている人間としては勇気が出た。同時に、やっぱり何が何でも挑戦しなくちゃ結果は出ないんだよね、とも思う。
 この作品をかつて夢を追っていたであろう映画界の人々が作ったことに意義がある。夢を成した彼らが、まだ夢しか見ていない人間へのエールとして作った作品とも観れ、僕は漠然と挑戦しなくちゃと決意した。具体的な考えは何もないが。

 とは言え、何も考えずに洋楽だけ聞くのも正しい見方だろう。せっかく優れた物語とそれを盛り上げる音楽があるのだから、難しいことを考えずに見ても楽しめる。