2017年7月27日木曜日

「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」(ティム・バートン監督、20世紀FOX、2016)

 絵は素晴らしいけど設定とシナリオがとっちらかった作品、というのが見終わった後の感想である。
 特に設定面は致命的で、この作品はタイムループものというファンタジーの皮を被ったSFであり、さらにループだけでなくタイムトラベルも関わっている。つまり、物語の舞台は現代→1943年へタイムトラベルし、さらに1943年9月3日をループした後、1943年9月3日を経由して2011年で決戦を迎えるのだ(ラストシーンは2011年から再び1943年へ……)。これが複雑でなくて何と言おう。バック・トゥ・ザ・フューチャーですらもう少しわかりやすかった。正直、2時間程度で碌な説明もないまま時間軸を色々動かすのは無謀だったと思う。タイムトラベルの条件も特定の場所を通るだけなので、舞台が動く中盤以降は今のシーンがいつの時代なのかがわかりにくかった。

 シナリオ面で今一つだったのは、原作に続編があるせいか、主人公の成長が見られなかったことだった。現実世界で友人もなくいじめられ親からも理解されず居場所がない少年が、実は非凡な力を持っており、その力のお陰で異世界に行けて、さらに彼にしかできない任務を与えられ英雄的行いを成し遂げ恋人ができる。展開自体はジュブナイル系というより絵本でもよくありそうな行きて帰りし物語なんだけど(そもそもハリーポッター……)、本作の場合は元の世界に戻らないのだ! そもそも主人公は最後の戦いの果て、元の時代ではなく時間軸のずれた世界に放り出されるのだが(この時点でちょっと、ね)、恋人を求めてタイムトラベルポイントを何箇所も辿って、ついに恋人の世界に帰る! あれ、元の世界の親御さんはどうなったの? これ、シナリオ的にダメなんじゃなかろうか。
 さらにだ、主人公が暮らそうと決めたループ世界なんだけど、客観的に見て恐ろしい世界ではなかろうか。映画の序盤~中盤でループ世界が描かれるんだけど、ループしてるからみんな毎日何時何分に何の出来事がわかるか覚えている。逆にいつも通りのスケジュールで動かないと怒られる始末。永遠に生きることができ、食べ物とかも困る描写はないが、究極のディストピアである。
 そして主人公の恋人となる女性も、元々は主人公の祖父が想い人だったらしく、そこら辺の伏線も解決できずに終わってしまったっけ……。主人公の祖父に恋してたから主人公に脈はない、と言われていたが、いつの間にか両思いになっててびっくり。特に解決する必要のない設定ならなくても良かったんじゃないの、主人公の祖父の想い人設定。

 ビジュアルは面白い。空気より軽い少女、手から炎を放つ少女、ハヤブサに変身する女主人、無生物に命を吹き込む青年、夢の内容を目から映写できる少年……。コレラに加えて適役である化物と怪人がおり、怪人は悪趣味な描写で怪人っぽい。
 バトルシーンも迫力があり、骸骨の群れVS化物はいくら骸骨だと言っても手に汗握っていた。半透明な化物も半透明だから見にくいことはなく、色々観客から見やすいように効果を付けてくれていた。
 それだけに設定とシナリオが今一つなのは惜しいと言わざるをえない。やはり続きモノの第1作目を無理やり単独の作品に仕立て上げた弊害かねえ。