Tellurは、……現在色々物色中です。

「貞子VS伽椰子」(白石晃士監督、KADOKAWA、2016)

2017年7月19日  2017年7月19日 
 ホラーは苦手だが、この作品はタイトルからして笑わせにかかっていると感じたので、DVDで見てしまった。良い意味でも悪い意味でもその期待が裏切られた。

 この作品は、「フレディVSジェイソン」とか「エイリアンVSプレデター」的な人気のあるキャラクターをクロスオーバーで出してお祭りにしよう的な作品だと当初は思っていた。つまりホラー要素が薄いか、または単なるスプラッターになっていると思ってたんだ。
 でも実際に見てみたらちゃんとしたホラーになっていて面白かった。貞子と伽椰子という2要素がいて、ホラー要素が分散するかと思ったけど、意外と言っては失礼だが、上手くまとまっていた。もちろん設定は微妙に変わっており、例えば呪いのビデオは確か「リング」だと7日の猶予があったのに、今作では2日に変わっている。インターネットとかの影響でスピード感を出さねば古臭いイメージになってしまうので、良改変。ちなみにインターネットと言えば、呪いのビデオをネットにアップするシーンとかDVDに焼くシーンとかがあって今時の恐怖感はあったのだが、元ネタの怖さは薄れていたと思う。
 ただし、物語は基本的に呪いのビデオを中心として進むので、伽椰子&俊雄君はあまり見せ場がなかった。やっぱ呪いの家なんて向こうから物理的にはやってこれないから、人間が立ち入らなければストーリーに関われないんだよなあ。呪いの家系のエピソード&貞子を伽椰子にぶつけよう! のシーンは正直無理があった気がする……。
 ちなみにこの貞子VS伽椰子による呪いの対消滅を計画した霊能者が登場すると、いかにも呪いが解決できそうな雰囲気になる。それまでのリアリティのある日常描写とは一線を画すファンタジー感満載の姿だ。何と言っても、手でお祓い(?)すると本当に霊能力が発動したり、盲目だけど霊感のある少女を連れていたりとマンガ的に描かれている。今までの雰囲気を壊すキャラクターであり、同時にストーリーが終わるんだ、呪いが解決するんだ、と視聴者に安心感を与える。

 が、実はここまででタイトルにもなっている貞子と伽椰子が戦うシーンはない。そもそも映画全体を見ても、貞子と伽椰子が出会ってからラストになるまではスタッフロール含めて15分前後しかない。冷静に考えると、2人とも最終目的は人間を殺すことなので直接的なバトルにはならないんだよな。
 この映画は真面目にホラーをやっているが、ホラーをやってしまったためにインパクトが薄れた面もあると思う。例えばターミネーター2におけるT-800とT-1000みたいに延々と肉弾戦か超能力戦を行うことを期待していたら短すぎると思うし、はたまた単純に呪いによるキルスコア勝負を期待していたら被害があまりにも少なすぎる。幽霊が出るホラーという題材の限界なのかもしれないが、お祭り感満載の派手な映像にはなっていないのがタイトルに比べて残念だったと思う(この内容なら、「リングにかける呪怨」的なVS要素がなさそうな名前にした方が良かった)。

 最終的には除霊が失敗し、貞子と伽椰子が融合してとんでもない呪いというか化物になって霊能者もろとも登場人物は全員死ぬことを示唆して終わるんだけど、素体が素体だけにビデオを介するか、家に引きずり込まなければ殺せないと思うんだ。インターネットにビデオがアップされたと言っても、有名動画サイトから削除されてしまえば被害も拡大しないし、ねえ。
 貞子も伽椰子も既に攻撃力が極めて高いのだから、それをかけ合わせて更に攻撃力を高めたところで怖さは比例しないのであった。インターネットに拡散するなら、テレビでサブリミナル映像みたいにこっそりと放映されて、日本人の心の奥底に刻まれ(序盤のミームだ!)、ふとしたタイミングで心の奥の呪いが解けて殺しまくる(多重人格探偵サイコだ!)みたいに量を増やすか性質を変えるかした方が良かったと思う。

 と不満も書いたけど、「リング」と「呪怨」のリメイクを早回しで見るみたいな目的には良いかもしれない。どちらも今の時代に見るには時代遅れになった部分が目に付くので……。
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