2018年7月23日月曜日

「The Rabbits」(John Marsden著、Shaun Tan絵、1998)

 この作品が世に出たのは1998年らしい。そのため今の視点から色々言うのはフェアじゃない、とは思うのだが……。
 実は僕はこの作品が出版されていたことを知らず、この前ソフトカバー版を買ったのだった。英語だ、面倒だなと思っていたが何とか読み切れた。しかし内容に引っかかった。移民のアレゴリー? それともアメリカ大陸やオーストラリア大陸入植者? ショーン・タンのサイトでは植民地主義に関する話とのことだが……。

 ストーリーは、森の獣が楽しく暮らしてたところ、rabbitsがやってきて、最初は森の獣にも得だったが次第にrabbitsの数も増え、持ち込まれる動物が病気を広め、rabbitsは環境を破壊し森の獣を間接的に殺し始める。さて、森の獣にとってrabbitsがやってきたのは良かったのか。「我々(森の獣のこと)はrabbitsにどう対処すれば良かったのだろう」という森の獣のモノローグで終わる。

 この構図、最近見たような……。そう、今の情勢的には欧州やアメリカやオーストリアへの移民と取れてしまう。いや、中東からの亡命者やメキシコからの入国者、アジア系移民はrabbitsと違って先住者(白人)の土地を破壊(木を切ったり野生動物を狩ったり)したり病気を広めたりしない? それはどうだろう。文字通りの意味では白人の環境を破壊はしていないだろう。少なくとも移民が増えたら白人はネイティブアメリカンみたいに絶滅すると叫ぶ人はそこまで多くはないと思う(多いのかな)。今問題になっているのは手垢のついた言い方だが文化と文化の衝突であり、それが生活や住環境に影響し移民の排斥にまで発展している。そんな中で、そもそも植民地主義の歴史を寓話的に描いた本書が、今の、2018年に問題になっている移民とは無関係だと言えるのだろうか。

 僕にとってはrabbitsは移民とも読め、嫌な気分だった。植民地主義というのは明確な基準があって批判も簡単にできそうなんだけど、抽象化していくとどこかの段階で移民と構図が同じになる。それを区別するならば先住者と移住する人の違いを設定しなければならなくなり(つまり植民地主義と昨今の移民の違いは、先進国と遅れた国を設定してしまう)、新たな差別の構図となる。
 2000年以前の作品に文句をつけるのもなんだが、危ういものを感じた。