Tellurは、……現在色々物色中です。

「魔界転生」(日本テレビ開局65年記念舞台)

2018年11月12日  2018年11月12日 
 明治座の口演のやつを観てきた。実は、僕にとって魔界転生は甲賀忍法帖に比べると設定の壮大さに比べて派手さで劣るイメージがあり、小説を読んだだけではなぜ歴史上の強者達が復活する魔界転生が地味なのかわからなかったが、舞台を見て発見。
 それは、敵があくまでも普通の人間なのだ。忍法帖シリーズみたいに異形の力を用いず、悪魔の力で復活したものの必殺技も持たずに単に殺陣するのみ。柳生十兵衛も必殺技と呼ぶにふさわしい必殺技は持ってないが、あくまでも人間であることを考えればその地味さが渋い格好良さになる。敵の転生衆どもは人間を超えてるくせに派手な技の1つや2つも放てないのか!
 たぶんそれが舞台としてのリアリティになっていると思う。必殺技をもっているとアニメや映画になってしまうだろう。舞台でそれは……難しいだろう。それはわかっているが、やはり転生衆はその強さを示すため必殺技を放ってほしかった。原作小説も今回の舞台も、結構あっさりと転生衆は殺されてるからなあ。

 舞台そのものはガンガン動いて派手にライティングがかかっている。ただし、事あるごとにスクリーンに映像を投影されるのがちょっと僕には期待はずれだった。特に島原の乱の合戦シーンはかなり映像で見せられていたんだけど、映像を見るなら映画で良いじゃん……と思わないでもない。舞台は生で役者の芝居を見るのが醍醐味なんだから、映像は多用してほしくはなかった。ただし、役者に上から映像を被せる表現は、例えば首を切られるとか迫力があって良かった。舞台における映像とはこうやって役者と融合させる方向でいかなくちゃね。

 ストーリーは多少アレンジが入っている。今回の舞台は女性枠に淀君が参戦。ただ散々盛り上げてた割にはあっさりと退場してしまった。淀君の成仏は物語の後半で良いのでは……と思ったけどそうすると柳生十兵衛が魔人殺しの剣を手に入れられないのか。ストーリーが破綻なくまとまっているため物語の展開に不満があっても文句を言いづらいのが辛い。

 演技は主人公の人と浅野ゆう子氏と松平健氏が飛び抜けて優れていた。他の人、特に若い人ら、はシーンによってちょっと首をひねるところもあった。僕が気になったのは時々すごく滑舌が悪くなってセリフを聞き取りにくくなったりするところ。浅野氏・松平氏に比べると声が響かないので早口になったりするとセリフが聞き取れないときもあった(もちろんエロイムエッサムの呪文は聞き取れなくて当たり前とわかっているので、別のセリフで、です)。他には叫び系の声が喉からウギャーと出してるだけなのでなんというか、ダサい。日本の役者はもっとましな叫び声を発明しないと演技がダサくなってしまうぞ。

 とは言え全体的には非常に満足。質の良いストーリー、格好良い舞台、素晴らしい演技、本当に見てよかった。
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