Tellurは、……現在色々物色中です。

「ファースト・マン」(デイミアン・チャゼル監督、ユニバーサル・ピクチャーズ製作、2018)

2019年3月18日  2019年3月18日 
 町山智浩氏が「冷たい映画」と語っていたので、どんな気持ちの悪さがある映画なのかと思ってみていたが、普通の精神を持った人を描いたまともな映画だよ。むしろ僕はハリウッドに出てくるアメリカン共の発狂したような明るい感覚についていけないので(最終絶叫計画シリーズは例外だ)主人公であるニール・アームストロングにかなり感情移入して映画を見ていた。夫としてはアレだったのかもしれないが、映画で描かれる限りでは知り合いになりたい、友達になりたいと思わせる好人物だと思うよ……。
 実際問題としてこの映画が本当にアームストロング博士の内面を再現したのかは本人のみにしかわからないが、少なくともストーリー的な整合性は取れていると思う(というか取るように制作陣が四苦八苦したのはわかる)。冒頭で亡くなった娘さんもクライマックスで「ああ、そういう風につながるのか」と思わされたし(とは言えそんなにしつこく過去を忘れなかった執念にはちょっと引いた)。
 ハリウッドのエンターテイメント的な底抜けの明るさや大笑いするような作品じゃないけど、地を這うような努力と情熱に浸りたい人は見るべき。

 以下小ネタ。
 時間の経過表現が本当にさり気なく用いられるので、ぼうっと見ると単に描写がつながっていないと勘違いしてしまう。序盤で娘さんがなくなった後、アームストロング博士の奥さんがいつの間にかお腹が大きくなり、ついでいつの間にか次男が現れていたが、それだけ時間が経った表現かと感心した。とは言え、長期間の話をシーンの切り目を意識させず自然につなげているため、アームストロング博士が楽しく子どもたちと遊んでいるかと思えば心を閉ざしていたりと感情の起伏が激しすぎる人のように思えてしまった。
 宇宙を客観的に描くシーンで物音がしない。この映画は傑作だ! というのは冗談だが、「インターステラー」で意識したんだけど、真面目に宇宙を描いた作品はちゃんと宇宙では物音をさせないのが最近のトレンドなのだろうか。いや、宇宙で音が発生しないのはそれで正しいので素晴らしいことだと思う。
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