2008年4月8日火曜日

「穴、文字、血液などが現れる漫画」感想



 僕にとって駕籠真太郎の漫画は少し古い作品の方が好きです。絵柄から推察するに1990年代の作品群ですね。駅前シリーズとか、万事快調とか。この理由を考えながら、今作品「穴、文字、血液などが現れる漫画」を読むとなんとなくわかりました。
 それは、
抽象化されたゆえの表現・ネタの転がし方の面白さ
が古い作品にはあったなぁ、と。
 別に最近の作品が悪いわけではないのですが、今作に収録されている「バトル・ロ愛ヤル」にしても「堀江くんとホリえもん」にしてもネタになるモデルが現実世界で、しかもリアルタイムで活動しているため、どうしても枷となってしまいます。この程度のいじり具合だったら、下手すると現実でスキャンダルが起きたらそっちのほうが想像を超えているかも可能性があります。
 「バトル・ロ愛ヤル」は日本の「愛ちゃん」たちがそれぞれの技を披露して他の「愛ちゃん」を殺していく話ですが、オチをチンパンジーにするよりも「愛子さま」にしたほうがネタにはなったと思います。
 「堀江くんとホリえもん」なんていじっている部分が少ないくらいです(これなら孫社長とか三木谷社長×堀江社長の関係に持っていったほうがインパクトはありました)。
 「女子アナのあな」は女子アナを捕獲して養殖して放流するネタをメインでやったほうが面白かったような……。
 面白くなり始めるのは「白の情景」から。貞操帯を着けられた男女がそれを外す為に頑張るお話ですが、この作品の肝は、貞操帯を外そうとすると罠が作動する点です。しかも何回も。この変な執拗さが駅前シリーズなど駕籠真太郎の漫画の面白さになっています。
 「満員電車」。簡単に書くと、電車に乗るという行為が性行為と同じであったら……的な話です、かなり端折っていますがね。落ちの、恋人同士で行う性行為と電車に乗るという意味の性行為はやっぱり違うという件はなかなかブラックで良いです。
 「駅前暗黒」から始まる駅前シリーズはいつもどおりの出来です。変な法則が支配している世界でごく普通に法則に従って生きる人々を描いています。訳わからないくらいしつこくネタ(しばしばエロやグロと結びつく)を転がし、しかも一切、突込みがないのは素晴らしい。
 「DRAGON BUSTER」以下駕籠真太郎古典シリーズ。絵柄から考えると「人間以上」の前後でしょうか。「人間以上」作品群と傾向は似ています。しばしば「ただ残酷なだけ」的な評価を受けるのですが、僕はこれはこれで好きなんですがねぇ。特に駕籠真太郎の古典作品はテーマ性がない分、嫌な後味の悪さがあって、おいしいですよ。
 
 とりあえず買って損はない。僕は駕籠真太郎の現在から過去、古典の作品の移り変わりを読めてうれしかったですよ。


【2008/Apr/29追記】
 そういや、「駅前一字」って何かに似ていると思ったら唐沢なをきの「カスミ伝」シリーズに出てきそうなネタだったんだな。詳細は別の日記で書くけど駕籠真太郎と唐沢なをきって実験マンガという枠ではくくれるんだな。まあ作風は全然違うけど。