2018年2月19日月曜日

「女子高生に殺されたい」(古屋兎丸、新潮社、全2巻)

 たぶんマゾヒズムについて描いた作品……なのだろうけど、タイトルにもなっている「女子高生に殺されたい」願望が何の解説もなく前提となっているせいで、僕のようにそのような願望のない人は全く感情移入できなかった作品。別に感情移入する必要はないかもしれないけど、そのせいで一歩下がった視点から読めてしまい、作品の粗が目についてしまった。

 一番大きな粗だったのは、自分の死体の身分をわからなくする方法。部屋の指紋など痕跡を消して、自分の身に付けるものも全て捨て去り、長旅に出たことを装い、実は近くで殺されている……。こうやって書き出すだけで成功しないのでは? と思わざるを得ない。本作ではしっかり練られているように思えて穴だらけの計画はこれ以外にもたくさん(例えば自分を殺させる女子高生を誘い出す方法とか、10年近くに及ぶ計画をよりによって人目に付くところに置いていたとか)ある。一応主人公は頭の良い人として描かれているはずなんだけどな。
 なのでサスペンスかと思っていたんだけど、どうにも緊張感がないのだ。主人公の望みは自分の死だし、あまり精緻ではないとは言え、周囲の人への迷惑を考えて動いている。死が起こっても、大した問題にはならないのが読めてしまう。これが他人に対する侵害であればもう少し切迫するものの……。そうか、だから世間では攻撃的なコンテンツがたくさんあるのか。暴力表現がなくならない理由を身をもって感じてしまった。

 なお、感情面で問題を抱えているが知能は人並み以上というキャラクターを万能のものとして使い過ぎでは? と思った。最初はヒロインにしか懐かないとか描いておきながら、普通に他のキャラクターと絡めるんだもん。読み進めるに従って精神的な病気にかかっているとは思えなくなってくる……。

 全2巻ということで、まとまった作品だと思う。伏線も上手く、ストーリーに無駄がない。そのため逆に、あっさりしすぎるけど。