「母の記憶に」(ケン・リュウ 著、古沢嘉通 他訳、早川書房、2017)
2017年5月24日
2017年5月24日
この間、第一作目短編集を読み、 著者のことを中国系アメリカ人として強調した感想文 を書いた。僕はそれが間違っていることだとは思っておらず、しかし今作を読み、1点だけ見誤った部分を発見した。
著者の作品はSFというよりももっと広い視野を持った空想のガジェットや発想を元に人間について語っているということだ。それはもはやSFですらない「草を結びて環を銜えん」、「訴訟師と猿の王」と「万味調和」を読むとわかる。前回、芥川龍之介を引き合いに出したが、歴史小説の中にファンタジー色の強い虚構を少しだけ入れ込み現代的なものを読ませる手腕は正に芥川龍之介の得意とする手法だ…