「竜のグリオールに絵を描いた男」(ルーシャス・シェパード、竹書房文庫、2018)
2018年10月29日
2018年10月29日
もしも我々の世界に、我々自身が認識できる形で人間を超えた存在がいたら? その存在はあまりにも巨大で、何の力を持っているかすらわからず、我々と意思疎通はできなく、されど完全な無機物とはみなせず意思を持つ存在と思えてしまう。要するに手垢のついた呼び方をすれば「神」なわけで、この本は「神」が人々の見えるところに鎮座している社会で起こった事件を描いた短編集である。
歴史上、中世などでは神は身近に感じられてたと思われ、その感覚がこの本では中心のテーマとして描かれている。登場人物の思考は現実世界の人々に極めて近いため、ファンタジーを描いたというより神と共に暮ら…