Tellurは、……現在色々物色中です。

「竜のグリオールに絵を描いた男」(ルーシャス・シェパード、竹書房文庫、2018)

2018年10月29日  2018年10月29日 
もしも我々の世界に、我々自身が認識できる形で人間を超えた存在がいたら? その存在はあまりにも巨大で、何の力を持っているかすらわからず、我々と意思疎通はできなく、されど完全な無機物とはみなせず意思を持つ存在と思えてしまう。要するに手垢のついた呼び方をすれば「神」なわけで、この本は「神」が人々の見えるところに鎮座している社会で起こった事件を描いた短編集である。  歴史上、中世などでは神は身近に感じられてたと思われ、その感覚がこの本では中心のテーマとして描かれている。登場人物の思考は現実世界の人々に極めて近いため、ファンタジーを描いたというより神と共に暮ら…

「ジュラシック・ワールド/炎の王国」(J・A・バヨナ監督、レジェンダリー・ピクチャーズ、2018)

2018年10月24日  2018年10月24日 
リアルタイムで映画館で観たが、感想文を書くタイミングを逃し書かないままズルズル来てしまったので、箇条書きだが公開する。 ・前半(イスラ島)と後半(ロックウッド邸)でお話がぶつ切りなのが気になった。火山パニックである前半は恐竜、あまり絡んでないし。 ・相変わらずヒロインは「可愛い女」だね(一応ラストで活躍するけど、基本的には男に恋愛面含めて頼る女的位置づけで描かれている) ・恐竜が多少キャラクター化されている(忠犬のように可愛いヴェロキラプトル、頼れる肉体派のティラノサウルス、突撃隊長のケツァルコアトルス、火砕流に巻き込まれるアパトサウルス(ブラキオサ…

「あだ名で読む中世史」(岡地稔、八坂書房、2018)

2018年10月4日  2018年10月4日 
傑作。西洋の歴史にすこし興味を持つと、二つ名(あだ名)が学術の場でも使われていることに気付く。僕が最初にあだ名を意識したのはリチャード獅子心王だった。あだ名で歴史上の人物を呼ぶのは非常にオタク的な気がするのだが、歴史学者たちはどう考えているのか、いったいどれだけの人々があだ名を持っているのか、それぞれのあだ名の元になった逸話はあるのかなど、野次馬的に知りたい好奇心を満たしてくれそうなので読んでみた。  内容は、一番始めにあだ名が後世まで伝えられている理由や、悪口ではないのかという疑問への回答や、あだ名が最初に用いられた時期など、西洋中世史に興味を持っ…

立ち読みの思い出

2018年10月4日  2018年10月4日 
ふとした時、中学生頃、毎日学校帰りに立ち読みしてたのを思い出した。……念のために書いておくが、あのときはまだ立ち読みが苦笑いで黙認されていた、そういう時代だったのだ。マンガ雑誌はエロも含めて一切シュリンクをかけられてなかった。ある書店では僕と共に毎日、同じようなメンバーが立ち読みをしており、高校生も大学生っぽいのも、フリーターっぽいのも、スーツを着たお兄さんもおっさんもいた。スーツを着た人たちは当然、サラリーマンのはずだが、中学生の帰り時間に立ち読みするなんてどういう仕事だったんだろう?  ぼくが通ってたのは2つの書店と1つのコンビニ。書店の1つは品…

「プーと大人になった僕」(マーク・フォースター監督、ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ、2018)

2018年10月4日  2018年10月4日 
ディズニーが作った原作のその後の映画なんだって。お、それじゃあ、「魔法にかけられて」みたいなブラックコメディなのかな?  と思っていたが、違った。大人になって忘れてしまった少年少女時代の夢と驚きをもう一度味わいたい人向けの映画であり、心温まる作品であった。あったのだが……。  大人になって家族を持って仕事をしている(つまり現実を生き成長してしまっている)元少年が、幼少時代のままの友人と共に幼少時代そのものの遊びをする姿は客観的に見ると不気味だよね。  主人公であるクリストファー・ロビンの娘がプーさんを始めとするぬいぐるみたちに出会って冒険するのが主軸…

「ミセス・ダウト」(クリス・コロンバス監督、20世紀フォックス、1993)

2018年10月4日  2018年10月4日 
ミセス・ダウトを今頃になって初めて見たが頭を抱えた。  ブラックコメディと言い張ってもとにかくヤバい。今の基準からすればヤバさしかない。  あらすじは、子煩脳で演技の才能はあるけどこだわりが強すぎて甲斐性のない役者の父親が、ついにフルタイムで働いてる母親をキレさせ離婚される。子供たちは父親に懐いてるが、父親が養えないので親権は母親に、父親は週に一度子供たちに面会できるのみ。母親も子供たちの世話ができないのでお手伝いさんを雇おうとするが、事前に聞かされていた父親は募集の広告をこっそり改竄(!)し、特殊メーキャップを用い妙齢の「ダウトファイア夫人」と偽り…