Tellurは、……現在色々物色中です。

「ビット・プレイヤー」(グレッグ・イーガン著、山岸真訳、ハヤカワ文庫、2019)

2019年3月29日  2019年4月3日 
久しぶりのグレッグ・イーガンの短編集だぞ! 今度はどんなヤバい世界を見せてくれるのか!?  最初の「 七色覚 」はナノテク(技術名はどうでも良い)で人間が本来持っている以上の色覚を密かに身に付けた人々が、周囲の普通の人間を自覚なく見下し、それでも普通の人間による社会で成功できずにいる姿を描いている。超人・超能力者の苦悩を描いた作品と言い表せるのだろうけど、グレッグ・イーガンはそこに一捻り加えており、超人が必要とされる分野はテクノロジーで代替するため超人の仕事がない、という技術に仕事を奪われる社会をも描き出す。普通の人々が持ってない能力は技術開発で対応して…

「ファースト・マン」(デイミアン・チャゼル監督、ユニバーサル・ピクチャーズ製作、2018)

2019年3月18日  2019年3月18日 
町山智浩氏が「冷たい映画」と語っていた ので、どんな気持ちの悪さがある映画なのかと思ってみていたが、普通の精神を持った人を描いたまともな映画だよ。むしろ僕はハリウッドに出てくるアメリカン共の発狂したような明るい感覚についていけないので(最終絶叫計画シリーズは例外だ)主人公であるニール・アームストロングにかなり感情移入して映画を見ていた。夫としてはアレだったのかもしれないが、映画で描かれる限りでは知り合いになりたい、友達になりたいと思わせる好人物だと思うよ……。  実際問題としてこの映画が本当にアームストロング博士の内面を再現したのかは本人のみにしかわから…

「呪いの都市伝説 カシマさんを追う」(松山ひろし、アールズ出版、2004)

2019年3月18日  2019年3月18日 
というわけで 、1つの都市伝説に絞って考察する本を紹介。著者はいわゆる研究者ではないので、都市伝説の収集量や系統立てや分析に限界はある。もっというと、本書の内容は様々な時代・地域で流行ったバリエーションを記録しただけで、それから先の分析については尻切れトンボ気味であることは否めない。とは言え、ネットや口コミの普及も今みたいに広まってなかった時代、そもそも都市伝説というものが一部の好事家にしか知られてなかったであろう時代に「噂」のように廃れやすいものを聞き取り調査をした功績は大きいと思う。  本書の価値はここまでは素人でもできて、ここから先は専門家でないと…

「怖い女 怪談、ホラー、都市伝説の女の神話学」(沖田瑞穂、原書房、2018)

2019年3月18日  2019年3月18日 
「怖い女」、というより、「女性の怖さ」とはどのような要素なのかについて世界中の神話や日本の神話・言い伝えを元に考察した論説。女性の怖さ=底なしの母性であることが最後に明かされるのだが、世界各地の神話を参考にその母性の描かれ方を紹介している。もちろん神話が言い伝えられた文明の概略などは書かれていないので神話の記述が文明特有のものなのか判別がつかないのだが、それでも同じようなモチーフ・ストーリーが地理的に遠いと思われるところでも見られるさまは圧巻。神話をネタにした本でしばしば見られる日本神話や北欧神話、ギリシア神話、インド神話はもちろんのこと、スラブや南…

「砂糖の空から落ちてきた少女 」(ショーニン・マグワイア著、原島文世訳、創元推理文庫、2019)

2019年3月14日  2019年3月14日 
シリーズ1作目「 不思議の国の少女たち 」 シリーズ2作目「 トランクの中に行った双子 」  様々な異世界に行って帰ってきた子供たちが集まる学園小説第三作。 前作 とは異なり、ストーリーが動く。死者の国など 第一作目 で言及されていた異世界にも行き、その風景が具体的に描かれるのは面白い。強い個性を持った少年少女の冒険物語であり、育まれる友情やピンチを切り抜ける機転、分量は多くないとはいえ手に汗握るアクションなどその手のジャンルが好きならばワクワクする。  そう、あらすじを読むとワクワクするんだけど、内容は少し微妙だったのだ。それはなぜかと言うと……。  1つ目に、この…